名誉会長メッセージ

IT化におけるダンス界の団結と
未来のための啓蒙活動

JDC名誉会長 中川勲

 「社交ダンスは男女の3分間の凛とした恋愛気分である」と言った学者もいますが、そもそも“男女が触れ合う”、“踊る”、“歌う”といった行為は、食欲に次いで人間の本能であると言われています。 しかし日本においてはまだまだ“ダンス”というものの確固たる位置づけがなされていないのは何故でしょうか? 私はその大きな原因の一つは、ダンス業界の低迷、つまり旧態依然の体制のままで運営されている業界の資質にあるのではないかと思っています。

 若者たちの間にダンスが今ひとつ浸透していかない理由もその辺にあるのではないでしょうか? 今や若者たちの必需品とも言える携帯電話は、活字離れしていると言われていた若者たちに、小説を書くまたは読む面白さを教えました。 我が『JDC日本ダンス議会』では、競技大会のエントリーを携帯電話で実施することが出来ます。

 ITを使ったこうした方向性は、今や世界中どこの業界でもフル活用した経営体制で進められていることはもはや周知の事実です。 ところがダンス界全体ではどうでしょう? 誰もが皆「ダンス界の繁栄を願っている。」「スター選手育成が必須である。」等などと声高にうたいますが、 実際には何一つ具体策を提示するわけでもなく、競技大会にしても、また自身のスタジオ経営にしても、ボランティア体制に頼っての、 また少数の愛好家に頼っての個人経営的発想が大勢を占めています。 もちろんこうした方向性すべてが悪いと言っているのではありません。 小規模ゆえの、また家庭的なつながりによる団結感ゆえの素晴らしい利点もあることは充分に承知しています。 しかしそれだけでは業界全体の繁栄は望むべくもありません。 そうした素晴らしい人間関係を持続するためにも、我々は早急に業界繁栄に向けた第1歩を踏み出さなければなりません。

 今『JDC日本ダンス議会』ではその戦略の一つにWEBサイトの活用に注目しています。 単にロゴデザインや教室ホームページデザインなどのリニューアルといった安直なイメージ戦略ではなく、 真のJDCブランド戦略を打ち出すことで従来の経営スタンスをより強固な事業戦略へと押し進める方向性で進めています。
 例えばダンス競技会を例にとってみても、現在はほんの一部、 それもトップクラスの選手のみのアナウンスで終わっています。 C級D級の選手たちも皆汗を流し必死の練習に挑み大会に参戦しているのです。 しかしそうした姿は全くアナウンスされていないのが現状です。 本来のダンス競技会のあるべき姿はこれでよいのでしょうか? 下位クラスの選手たちには自己実現の場がないと言っても過言ではないのです。 誰も皆、自分自身のダンスを正等に評価されアナウンスされてこそ明日への意欲も沸くはずです。

 チャンピオンたちの華麗なダンスシーンや活動状況、 また明日のスターと目される注目の新人たちをクローズアップすることはもちろんですが、 ランクにかかわらず登録されているすべての選手たちの『選手名鑑』や、 オーナーの先生方の『ダンスダンススクール図鑑』、 『ジャッジ名鑑』なども教室ホームページ上で誰もが見ることが出来たら、 愛好家の興味も一段とアップし、必ずや業界繁栄の礎になるはずです。 素晴らしい感動のダンスシーンは、肉体も頭も常に柔軟な感性で音楽を感じ取ってこそ生まれるものです。

 我々の業界も時代を柔軟に察知し、団結して明るい未来への道を切り開いて行こうではありませんか。 ダンスというものはそれだけの努力をする価値のあるものであると私は信じております。

日本ダンス議会(JDC)名誉会長
カール・アランアワード受賞( 英国協会)
中川 勲 Isao Nakagawa