競技会講評
11月13日 イーストジャパン選手権大会/ DSCJスタンダード A級 講評
ダンススタジオモリモト/森本 康成 先生
		

■第1予選

《ワルツ》
1番  安定して良く動いています。
3番   このクラスではやや動いていくエネルギーが不足しています。
4番   他のカップルから回避したのでしょうが、LODを逆行しないように注意してください。
5番   全体に動きが弱く見えます。
9番  男性の左サイドが開いてしまいます。そのうえ左回転のヴァリエーションで右サイド
   が下がってしまうため動きが詰まってきてしまいます。
13番  やや男性の右側にくっつき気味ですが、動きの感覚はあります。
20番  両サイドの弱さが目に付きます。
22番  もう少し身体のサイドを捌く感触をつかまないと動きで見劣ります。
24番  カップルの幅が取れていないために硬くなっています。左右方向に広げましょう。
25番  動きの強さも姿の良さも持っています。しかしナチュラルターンでは基本的なライズ
   アンドフォールが崩れています。曲の後半には手を抜いたのかやや消極的になりました。

《タンゴ》
11番  両サイドのトーンが抜けていて弱く見えます。
8番  身体が温まったのか、ワルツよりも良い動きです。
1番   身体を動きが見えてきました。
12番  顔の周りのイメージとともに動こうとしているため、おそらく本人の意識ほどには動
   いて見えません。下半身、脚、足に注意力を持って練習してみてください。
6番   やや男性の右肩が詰まり気味です。
2番   落ち着いて踊ってはいますがやはり左サイドが抜けてしまうのが気になります。
3番   肩、腕のまわりの神経がダンスにつながっていません。
7番   まだ身体が成長しきっていないようですので、基本的な動きの部分に絞って訓練する
   のが良いでしょう。
23番 良く動いていますが、顔の周りの気合で動きを引っ張ろうとしているような感じがし
   ます。もう少し冷静に脚の動きを意識したほうがより良く見えるでしょう。
17番  やや首が硬いです。呼吸を喉、胸などに浸透させるような意識が必要でしょう。
   動き始めなどに無用に足をピックアップする悪癖が習慣化しています。

《スローフォックストロット》
12番  他の組よりも先に動き出そうとしたのでしょうが、音楽とは関係なしに踊り始めてし
   まいました。
9番   ある程度動きの感触はついているようですが、お腹で押して動く場面も見られます。
4番   身体の前面から動いていこうとしています。左右方向にも使うことを考えてみてくだ
   さい。
25番  動きもあり、姿の良さもありますがフェザーステップは完全によれています。
   正直な、単純なフィガーの軌跡をこころがけると効果的でしょう。
21番  消極的に見えます。もっとどんどん動いていきましょう。
26番  動くためのものは持っていますが、足を置き気味なため横方向の動きのつながりが見
   えてきません。フォックストロットに限らず、ウェイトがない方の脚の捌き方が遅れ
   ているのでしょう。

《クイックステップ》
13番 上体の乱れがあるため、ライズ・アップしたときに動きがちぎれて雑に見えます。
12番 サイド方向へ身体が使われないため、動きの伸びにつながりません。
14番 動くエネルギーに欠けています。
2番  動きはつけようとしていますが、グリップ、頭、肩の位置をずらしながら跳ねるので
   うるさく見えます。
25番 踊り始めは積極的ですが、後半はやや手抜き、のようにも見えます。
19番 動けていません。男性がガニマタです。

1予選を見た印象としては、特に優れた動きがある、ダンスセンスで抜けている、という
ようなカップルは見当たりません。予選段階では主として強い運動性を発揮できるか否か、
ということで点数が決まって来ることでしょう。そのような場面では技術的に優位でなく
ともトレーニングが進めばある程度勝ち進める、と考えられます。

競技中転倒して怪我をした選手が出た模様です。よくよく注意してください。
怪我をされた方、お大事になさってください。

■第2予選

《ワルツ》
8番  見えては来ますが、やや流している感じです。予選段階でももう少し強く動いて欲し
   いところです。
6番   全体に平板で目を引くものに欠けます。
2番   脚が硬くなってきています。
11番  動きが伸びず、詰まってきています。もう少し動きが欲しいです。
15番  しっかりと動き始めました。しかし左回転で男性の左枠、左サイドははずれていくの
   が気になります。
   そのまま右回転のシリーズに入ってもその問題を引きずってしまいます。
23番  がんばって動いている感じはします。上体は少々うるさいです。
25番  動きはあります。右肩が上がるのは常態化しています。

《タンゴ》
11番  形がありません。動きもやや見劣ります。
2番   ワルツより良いです。脚が動いて見えます。
1番   この組もワルツよりタンゴのほうが良いです。しかしやはり男性の右サイドが固く
   なっているため、少々詰まって見えます。いまコントラチェックをしましたがそう
   した理由から女性のしなやかさ、シェイプなどが表現されません。
9番   上体の乱れが目につき始めました。
18番 両サイドのトーンが抜けてしまっています。
17番  前述の悪癖が気になります。そういったことがどことなく悪い印象につながります。
24番  二人の上体が詰まった感じになっていることが動きの良さを削いでいるように思い
   ます。
25番  タンゴになると首の緊張がより強くなります。

《スローフォックストロット》
2番   他のカップルとは別のコーナーから、楽な印象で始めることができました。
11番  フェザーフィニッシュが見えてきません。
1番   ワルツほどフットワークの雑さが気になりません。
4番   動きが捌けていません。
9番   肩が詰まって動きづらくなっています。
25番  フェザーステップ~リヴァースターンの正しい軌跡、といったものが意識されていま
   せん。動きは持っていますから、理解度に欠けているものと思います。一度見直して
   ください。
17番  お腹で押して行く動き方なので、とりわけフォックストロットでは動いて行けません。
22番  運動性の強さで見劣ります。より強く動く訓練が必要です。
16番  動いては行きますが、脚元がベタベタした感じで印象が薄くなっています。
   ライズアンドフォールやスウェイをもっと強調しても良いでしょう。
15番  男性の頭が前にかぶってしまいます。そのためリヴァースウェーヴ~バックフェザー
   で動きのつながりができません。

《クイックステップ》
13番  グリップが乱れます。男性の指がとび出ていて嫌な感じを受けます。
11番  動きがついてきません。
9番   上体の乱れがあるため、フィガーの進行性がなくなっています。
7番   動きが見えてこなくなりました。
4番   スウィングのないヴァリエーションではある程度保たれているシェイプが、スウィン
   グ系になるとなくなってしまいます。
24番  クイックではさらに背中の重さが目に付きます。
23番  がんばって動いていますが、気合が入りすぎるのかクイックになると特に上体がうる
   さく、雑に見えます。もう少し落ち着いて下半身を使う意識を持つと良いでしょう。
25番  この組もクイックになると形の悪さが強調されてしまいます。

■準決勝
ほぼ順当な準決勝だと思います。

《ワルツ》
全体にしなやかさ、伸びやかさ、といったものに欠けています。従って上体、腕を振り回す
力、踊ることではなくバランスの乱れを押さえ込む脚、身体の強さ、といったもので優劣が
生じているような印象です。
きれいなワルツのスウィング、をもっとはっきりイメージしてください。

《タンゴ》
タンゴになると全員ワルツよりも手、腕が硬くなっています。速く、鋭いアクションのため
には腕や手をよりしなやかに柔らかく、などということはこの水準の競技選手なら言葉では
知っているのでしょう。どうすればそのあたりをうまく表現できるか、ぜひ研究してみてく
ださい。
この準決勝ではやや曲が遅かったせいか、予選ラウンドほどガチャガチャせずに踊れたカッ
プルも見受けられました。そのあたりも参考になりそうです。

《ヴィーニーズワルツ》
曲が鳴り始めるタイミングがよくなかったせいで、カートシーをうまくこなせなかった場面
も見られました。フレッカールを踊る選手は少ないようです。A級のセミファイナルですので、
フレッカールも踊れるように練習してください。
ナチュラルターンの1歩目が高すぎるのか2歩目3歩目でみんな詰まってしまいます。左回転で
は進行性をもう少しLOD側に取ったほうが楽になるのではないでしょうか。

《スローフォックストロット》
選手としてはヴィーニーズワルツの後は苦しいものですが、間のアナウンスなどがあったせ
いか意外にみな動いています。あるいはヴィーニーズでエネルギーが使えていないのでしょ
うか。それでも曲の後半になるとやはり疲れを見せるカップルが出始めました。それほど曲
は長くはないようですので、がんばってください。

《クイックステップ》
全員疲れが見え始めました。そうなると比較的疲れなかった、という印象のカップルはかな
り有利になります。
5曲連続で踊って疲れない、というわけには行かないのは当然ですが。

■決勝

《ソロ ワルツ》
1番  最初の登場で緊張したのか、ここまでのダンスよりもやや硬く見えます。
6番   やはり緊張しましたか。甘いタイミングで踊り始めてしまいました。やや消極的にも
   見えます。
8番   スピン&ピヴォットは良い感じでしたが、左回転ではしなやかさが落ちます。
23番  緊張したようで、踊り始めがうまくはまりませんでした。普通の競技では戻るでしょう。
24番  この組はこれまでのラウンドでの上体の重さがこのソロではやや改善されています。
      意識の違いがあるとすれば進境のためのヒントとなるでしょう。
25番 慎重に丁寧に踊ろうとしたのかやや消極的でタイミングも遅れがちです。

ソロダンス、ということで全員少々緊張気味でした。

どのカップルも最初のナチュラルターンで伸びがありません。男性1歩目右足の上にボディ
が到達した時点で、左足・左サイドが遅れ、振幅が不足しています。そのため「1の終わり
でライズを始める」ことができず、強く使おうとした1歩目の終わりでボディが落ち込んで
しまっています。女性も1歩目左足にウェイトが到達する以前での右ボディ、右サイドの捌
きかたを考えてみてください。

《ワルツ》
全員ソロよりも動いています。ということはうまく精神的にコントロールできればどのカッ
プルもソロダンスの印象をより良くすることが可能、といえましょう。

《タンゴ》
8番   動きはタンゴでもこの組が比較的良く見えます。
25番  枠、上体の感触がここまでのラウンドよりも雑になってきました。
1番  男性の右側が詰まってきます。
24番  全体に重く見える印象がぬぐえません。枠もう少し左右に伸張させるイメージを持
   ってみてはいかがでしょうか。女性は背中の下の方、腰周りの左右を使い分ける意
   識を高めるとよいでしょう。
23番  どうしても上体のうるささ、雑さが気になります。良い動きを持っていますから、
   意識できればすぐにも改善されるものと思います。
6番  やや動きの強さで見劣るように思います。そのあたりがわかっているのか、がんば
   ろうとして硬くなってきているようにも見えます。

《ヴィーニーズワルツ》
どの組もナチュラルターンで1歩目を上から押してしまうため、ヴィーニーズらしいフレア
感が表現されません。

23番  フレッカールを踊った後の右回転で男性のヒップが抜けてしまいました。
   スピン系のヴァリエーションは必要ないと思います。
1番   しっかり動こうとしているのですが、やはりナチュラルターンで上から押してしまいます。

曲の後半はみんな疲れました。

《スローフォックストロット》
ヴィーニーズの疲れがあって難しくなります。
ワルツのナチュラルターンの問題と同様で(もちろんワルツでも同様に指摘されるべきです
が)、フォールアウェイリヴァースの2歩目3歩目もやはりボディが落ち込んで、ヒールを上
げている状態が保たれず、結果足が返ってしまうようなことになってしまっている場面が多
く見られます。

《クイックステップ》
世界中の審査員がその実力や踏風を認識しているような水準のファイナリスト・チャンピオ
ン級のダンサーは様々な印象の変化を求めてダンスの本質部分以外でもアイデアや飾り付け
に凝ってみたりします。そのような工夫は普通の競技選手には必要性のないもので、表面的
にマネをしただけと受け取られると反感を買うことになるでしょう。

8番  今日は安定してよい動きでした。スウィング系での伸びをより見せられるように研究
   してみてください。
1番   この組もコンスタントに動けていました。雑になって欲しくはありませんが、もう少
   しメリハリがあってもよいのではないかと思います。
25番  決勝では次第に上体、枠の乱れが目立つようになってしまいました。
24番  組み方、形の作り方とその保持の仕方に改善の余地がありそうです。
23番  将来性は際立っています。自分の感覚に拘って悪い癖をつけないように気をつけて下
   さい。
6番   男性の右側(ボディ、腕、手)に伸張性がつけばもっと動けます。

A級の決勝で上位入賞を狙うカップルは、下位級の選手からすれば憧れの的です。あえて言
えば「流石に上手いな」「きれいだな」「かっこいいねぇ」という存在であって欲しいも
のです。この競技でもそのような存在たり得る選手が多数いるように感じました。

次回以降より良いダンスを見せてくださるものと期待しています。

観覧のお客様、選手の皆様、審査員・役員の先生方、おつかれさまでした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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